株式会社HAMIRU

高滝湖グランピングリゾート(運営:株式会社HAMIRU
〒290-0557千葉県市原市養老1012-1
https://www.takatakiko-glamping.com/

企業

【株式会社HAMIRU】廃校をグランピングリゾートに “新たな観光”として再出発

廃校リニューアルにより、観光客の継続増加を狙う

グランピング事業を中心とした、宿泊施設の開発と運営を行う株式会社HAMIRU。宿泊業は利用者に感動を届けるだけでなく、無事に帰っていただくことまでが使命と考え、それを数十年先まで体現し続けるために、17のSDGs目標のうち15項目に該当する取り組みを積極的に行っている。

その一つが、「新たな観光地の創生」だ。同社は遊休地となった場所に新たな価値を生み出し、地域活性化につなげる事業に強みを持つ。遊休地とは、企業や社会活動に長い間使用されていない土地のこと。特に国内の地方都市では少子高齢化、人口減少等の影響で、遊休不動産が多数存在しており、その処置が問題になっている。

同社は同様の問題を持つ市原市から、児童数減少によって閉校となった旧高滝小学校を借り受け、リノベーションしたうえで「高滝湖グランピングリゾート」として2021年に新規開業した。校庭には24の宿泊サイトを設け、高滝湖畔を間近に臨みながら快適にグランピングが楽しめる。また、施設はカリフォルニアテイストでリゾート感を演出する一方で、家庭科室はフロントに、職員室は貸し切り風呂に改装するなど、あえて校舎内の雰囲気を継承し、懐かしさも感じ取れる仕様とした。

しかしながら、当施設の最大の存在意義は、子どもたちの思い出の場所がリニューアルされ、地域のランドマークとして観光の呼び水となっている部分だろう。施設の情報は、主にSNSで発信しているが、インフルエンサーやYou Tuberといった比較的若年層にアピールすることで、その人たちを介した情報発信が活発化。例えば、市原市に訪れるところから始まり、道中の小湊鉄道やサービスエリアの情報、グランピングにチェックインした後のアクティビティなど、一連の過ごし方が紹介されることで、年間約2万人もの観光入込客数の増加を達成した。目指す効果は、市原市への継続的な「宿泊型」観光入込客数の増加、地域資源の活用・地域雇用の拡大だ。

地元農家との連携が何よりの地域貢献

同社では地域資源である廃校の利活用によって、「地域社会への貢献」も促進している。事例の一つが、地域の農家と協力した農業体験だ。野菜や稲刈りの収穫体験を充実させ、来場者が食や農業について学べる機会を提供するとともに、地産地消につなげている。体験の場となる校舎裏の畑は、地域の農家に委託することで、地域住民の雇用も生み出している。実際に体験した来場者の満足度は極めて高く、これも農業の専門知識やノウハウは地元の農家、イベントの提供はHAMIRUという地域連携が、円滑に進んでいる成果といえる。

地域への貢献を語る上では、「高滝湖企業連携プロジェクト」の存在も欠かせない。これは、「高滝湖グランピングリゾート」と同時期に、観光協会の主導で設けられた場であり、主に月1回の会議で同社と観光協会や近隣施設とが、高滝エリアをより盛り上げるための活発な議論を行っている。これまでには、複数店舗が連動した飲食チケットの提供や、EV車やサイクリングで使える周遊マップの作成、ごはんマルシェの開催など、常に新しい試みが提案されており、今後も観光客がグランピングの利用に留まらず、近隣施設にも流入する仕組みづくりに注力していく。

ほかにも、同施設には2023年に、小湊鐡道の廃車両「キハ203」が譲渡されており、地域住民から長年愛されてきた車両を、宿泊施設やバーベキュー会場などで幅広く利用することで、小湊鐡道の認知度向上や市原市の新たな観光地創生につなげていく考えだ。

SDGsを推進することが、愛される施設への第一歩

同施設はコロナの渦中で開業したこともあり、非接触、非対面システムを早期に導入した。例えば食材BOXは、ロッカー内のカゴに入った食事を、各人が鍵を開けて取るシステムだ。人を介さずに受け取りができるうえに、フードロスや光熱費の削減効果が期待できる。また、スマートチェックインは、宿泊台帳への記入を全てデータ化して、省人とペーパーレス化を実現した。これらの施策は来場者へ安心感を提供し、コロナ禍においても好調な客足の支えになったことはもちろん、「環境保全への取り組み」にもつながったという。

一方で、同施設を取り巻く周辺環境は、急激に変化している。コロナの影響下では受け入れられた非日常スタイルが、現在では事業のブレーキになりかねない上に、ライバルも増加の一途をたどる。今後、グランピングがホテル、旅館などと並んで、1つの宿泊スタイルとして定着するには、ほかの宿泊施設にはないコンテンツが重要になるだろう。SDGsはその要素になり得るもので、来場者が宿泊によってSDGsに貢献できることが、宿泊施設を選ぶ理由になると考え、取り組みを強化する構えだ。

その上で、山本晴菜・企画販促部リーダーは、「愛される施設であるからこそ、宿泊者が訪れ、満足して帰宅し、末長い運営が可能になる。当施設ができることは周辺地域の方々と歩調を合わせて、地域が活性化する提案をどんどんしていくこと」と、今後もパートナーシップを大切にしながらしっかりと地域に根付いていきたいと、将来への思いを語った。