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【みどり産業】「ゴミゼロミッション」の実現で、みどりを未来へ

時代に先駆けたSDGsの取り組み

環境とリサイクルの関係性は、SDGsにおいても重要な課題の1つとされている。みどり産業は、市原市内でいち早くその問題に着目し、46 年間「ゴミゼロミッション」を掲げながら、パイオニアとも言える取り組みを続けてきた。同社の基幹事業は、一般廃棄物と産業廃棄物の回収および、回収後の工場での処理である。実際に自社リサイクル工場では、現在も年間で発泡スチロール約550t、ビニール約1900t、ビン約510t、缶約370t、ペットボトル約590tの再資源化を行っている。

そして、2002年にはリサイクルの知見を堆肥作りにも拡大。当初は堆肥作りのノウハウ不足からうまくいかない期間が続き、加えて認知度の不足や安全面の懸念から、利用者へのアピールにも苦慮した。しかし、時代の移り変わりとともに食品廃棄の問題が顕在化すると、周囲の捉え方にも変化が表れる。今ではみどり産業の作る高品質で環境にやさしい堆肥は広く受け入れられ、多くのリピーターにとって「替えのきかない逸品」となっている。同社が創業から培ってきた理念に、時代が追いついた格好だ。

仕組み化と啓蒙の両面で、循環型社会に貢献

堆肥を活用した施策の代表例が、食品リサイクルの取り組みだ。同社では「捨てない」「燃やさない」「埋め立てない」の理念のもと、生ごみから堆肥を作るリサイクルを、環境にやさしい循環型の施策として確立している。

千葉県内のスーパーや食料品を扱う店舗から廃棄される食品残渣は、年間で2600tにもなる。まずはそれを収集し、リサイクル施設で発酵させて堆肥化。次に、畑に食品リサイクル堆肥として混ぜ、そこからケールを育てている。このケールは通称「リベジ」と呼ばれ、大手航空会社の機内食に採用されるほか、加工した焼き菓子が市原市内の学校給食に提供されるなど、食育の面でも意義が大きい。

また、食品リサイクル堆肥自体も、市原市内の小中学校に寄付され、花壇や菜園等の土づくりの資材として活用されている。微生物の発酵によりリサイクルした堆肥が、環境にやさしいことはもちろん、生きた教材として地域の資源循環を身近に感じてもらうことが狙いだ。一連の取り組みは教育面でも高く評価され、現在同社では月に2〜3校のペースで、県内の学校にて、食育と環境についてや、「もったいない」からSDGsを考える等のテーマで、講義を行っている。

食べて、廃棄をし、堆肥から野菜を育て、最終的に食育の教育まで行う。SDGsの模範とも言える活動を進める一方で、同社が力を入れるのが、地域のイベントでの啓発活動だ。大型ショッピングモールで環境イベントを主催した際には、「デザインパッカー車」がお目見えした。これは、少しでも環境やごみのことを身近に感じてもらおうと、塵芥車両に子どもたちが描いた、地域を象徴するイラストをペイントしたもの。2023年度は分別・リサイクル・資源の大切さをテーマに、市内中学校から募集したデザインの起用が決まっている。現在、同車両は7台が活躍中だが、親しみを感じさせるデザインが好評なため、今後は配備されていない成田市などにも進出したい意向だ。

これ以外にも、いちはらアート×ミックス会場の小湊線沿線に「菜の花」を植える活動を行ったり、みどり工房にて、土づくりからこだわった野菜の販売や農業体験を提供したりするなど、地域の人々にみどりの大切さを伝える活動は多岐にわたっている。

パートナーシップを強化し、未来につなぐ

地域の環境から地球の環境を考え、自分たちがリーダーとしてSDGsの活動をしていく。こうした高い意識を保ちつつ事業を進めることは困難を極めるが、同社は継続の鍵を「人」と考え、社内の仕組みづくりに邁進している。大切なのは、社長を中心とした風通しのよい職場環境と社内提案をする風土によって、従業員が会社の成長を“自分ごと”として捉えることだ。自身と会社に一体感が生まれれば、事業が抱える課題に視野が広がり、それがやがてはSDGsへの貢献にもつながる。主な施策の1つには、200名ほど在籍する社員の中から希望者を対象に、月に1度全ての部署をまわるツアーを実施している。同じ企業でも他部署の仕事はわからないといった例は多いが、このツアーの存在が、自分の仕事への理解を深め、自社への愛着を生む契機になっているという。

「社員がどうしたら良いかを自ら考え、行動した結果、SDGsにつながるようなアイデアが次々に具体化するようになった。実際に市内の小中学校への出前授業は、全てが社員からの提案で運営されており、弊社の仕組みづくりが、身を結びつつあると感じる」と、津根頼行社長は語る。

今後、同社が目指すのは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考えを踏まえたリサイクル率のさらなる向上だ。それには自社が培ってきた技術を、企業だけでなく一般家庭にまで、惜しみなく投入する構えだ。また、自社だけでなく、市原市や同じ志を持った企業・団体と、協調していく必要もあるだろう。長きにわたり市原市のSDGsを牽引してきた企業の、未来に向けた挑戦を期待を持って注視していきたい。