自治体

「化学×里山×ひと」のかけ算で 「SDGsのシンボルとなるまち」の実現に向けた市原市の戦略

県内で初めて「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」に内閣府から選定され、SDGs達成に向けて先進的に取り組む市原市。経済・環境・社会の3側面から、同市が抱える臨海部企業の継続操業・環境問題・人口流出といった課題に向き合い解決するために、問題点を直視し、同じような課題を抱える地域社会のモデルとなるべく持続可能なまちづくりを推進している。

コンビナートを抱えている市原市だからこその挑戦

市原市では2003年をピークに人口減少が進み、特に若い世代や女性の転出が目立った。同市が抱える課題と向き合い、将来を見据えた持続可能なまちづくりを進めていくことが急務とされた。

そこで、2016年度に策定したまちづくりの羅針盤となる「市原市総合計画」を、社会情勢の変化や新たな時代の流れを踏まえ、SDGsの目標と市の施策の関係を明確化し、2020年3月に基本計画を改訂。改訂後の「総合計画」を基に、基幹産業である「化学」や自然豊かな「里山」、そして「ひと」をかけ算し相乗効果を狙いながら、地域課題の解決やSDGs活動に積極的に取り組んでいった。

その結果、2021年に内閣府から県内の自治体として初めて「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の W 選定を受けた。「未来都市」は、経済、社会、環境の3側面に好影響を与えるチャレンジをしている31の自治体が選ばれており、問題や現状を的確に捉え提案したことが選定理由となっている。また、「モデル事業」は、「未来都市」の中でも特に優れた取り組みを行っている10自治体が選ばれた。同市は、食品トレーなどに使用されているポリスチレン樹脂製品を再利用するという先進的なケミカルリサイクル計画が評価された。コンビナート企業の存在が大きい市だからこそ生まれたサーキュラーエコノミー(循環経済)への取り組みに、県内外で期待が高まっている。

地域が抱える課題解決のモデルケースとなるべく行政が旗振り役に

同市は今、「市原市SDGs戦略Ⅰ」に掲げる「市原発サーキュラーエコノミーの創造」「里山・アートを活かした持続可能なまちづくり」「子ども・若者の貧困対策」といった3つのリーディングプロジェクトに挑戦しているほか、企業や団体、NPOなどのSDGs活動を「見える化」するための「SDGs宣言制度」、革新的で同市を代表するような取り組みを行う企業を表彰する「SDGsアワード」の構築、そして子どもたちが楽しみながらSDGsを意識して行動するきっかけとなる「SDGs学習ゲームの制作」などに力を注ぐ。

行政が先導的な役割を担い、SDGsの目標達成に向け意欲的に取り組んだ結果、SDGsの出前講座の要請が昨年度に比べ2倍になったり、企業のSDGs研修後には「勉強になったので、自分のできることから取り組んでいきたい」と行動を起こす人が増えるなど、市民の意識の啓発を促し、行動変容にもつながりつつあるようだ。

「日本の縮図」といわれる市原市が、人口減少や少子高齢化、環境問題などに自ら率先してSDGsと絡めて取り組むことで、同市が抱える問題、ひいては日本の課題解決に向かうモデルケースとなる。
「SDGs のシンボルとなるまち」の実現を目指す同市の挑戦は、未来の国の在り方につながっていくのかもしれない。